【たゆたえども沈まず】原田マハ|ネタバレなし感想



こんにちはリンクです!


原田マハさんの『たゆたえども沈まず』を読んだ感想を書きたいと思います。

表紙絵にゴッホの絵『星月夜』が使われています(ニューヨーク近代美術館が所蔵している)
タイトルの「たゆたえども」とはどういう意味か?
【たゆたう】の意味・物がゆらゆら揺れること
『たゆたえども沈まず』は「ゆらゆらゆれるけれども沈まない」という意味です。


ゴッホと弟テオの生涯を描いた物語です。
事実に架空の人物とストーリーを加え、ドラマティックに仕上がっています。

登場人物

林忠正 —— 日本人画商
加納重吉 —– 林忠正の部下
フィンセント —– フィンセント・ファン・ゴッホ
テオ —– テオドルス・ファン・ゴッホ(フィンセントの弟)

 

簡単なあらすじ

舞台は1886年~1891年のパリ。
世界で最も有名な画家の一人であるフィンセント・ファン・ゴッホのことを「名前は聞いたことある」「美術の教科書で見たことある」くらいの認識の方のために、簡単に説明をすると、ゴッホは37年という短い生涯のうち、10年という、これまた短い画家人生でした。
弟のテオにお金を工面してもらいながらたくさんの絵を書きますが、なかなか世間に認められず、全く売れませんでした。
『たゆたえども沈まず』は、ゴッホ入門には最適な本です。史実とは異なるところもありますが、ゴッホ兄弟がどのように生きたのか。彼らを支えた人たちがいること。ゴッホの作品は決してフィンセント一人で作り上げたものではないこと。などが分かります。


感想

異常なまでパリに憧れた日本人2人と、異常なまでに日本に憧れたオランダ人兄弟(フィンセントとテオ)。
林忠正というすごい日本人がいたことを、この本を読まなければ知り得なかったかもしれません。
流暢なフランス語を話し、日本美術を広めた。しかし「浮世へを国外に流出した国賊」とまで言われることもあったとか。
印象派の作品をを日本に初めてもたらしたのも林忠正でした。
加納重吉は架空の人物ですが、この人がとてもとても良い人間。「日本人は皆、君のようにやさしいのか?」とテオに言われます。重吉とテオは友情を築きます。フィンセントに叱咤激励してくれる友達がいたら良かったのに…
フィンセントには絵とテオしかなかったのが辛い。途中から涙なしでは読めませんでした。

いまではゴッホを知らない人はいない、と言ってもいいでしょう。
2019年から2020年に東京と兵庫で開催されたゴッホ展の入場者数は、東京で45万人を超えました。
兵庫では3月29日までの予定が、新型コロナウイルスの影響で開催が短くなってしまいました。
私は二度足を運びました。『糸杉』と『サン=レミの療養院の庭』を見たのですが、鳥肌モノでした。ゴッホの絵は特に、実物と写真では雲泥の差があります。独特の厚塗りが、迫ってくるような感覚になります。

糸杉

サン=レミ療養院の庭



療養中の作品にすさまじい生命力を感じます。フィンセントは病院で何を思い、何を感じていたのでしょう…
生きているうちに良いことが何も無かったゴッホ。現在では、モネやマネやルノワールを知らなくてもゴッホは知っている、という方が多いのではないでしょうか?
展覧会を開けば連日満員。ファン・ゴッホ美術館には世界中から彼の作品をひと目見ようと訪れます。
天国で、ゴッホ兄弟はきっと喜んでいるでしょう。

原田マハさんの本は以前『楽園のカンヴァス』を読んでいましたが途中で断念。
当時は美術に今ほど興味はなかったせいかもしれません。それでも『楽園のカンヴァス』を読んで、倉敷の大原美術館へ行きました。もう一度読み直してみようと思います。あともう1つ読みたいのが『暗幕のゲルニカ』です。
美術ファンなら必読ですね。

ではまた!


 

 

 



コメントを残す