【中野京子さんの本】画家とモデルー宿命の出会い|感想



こんにちはリンクです!

中野京子さんの新刊が出たので早速読んでみました。
今作の焦点は、画家とモデルです。モデルがあっての名画ですよ。

表紙の絵が素敵じゃないですか?
この絵を描いたのは、アンドリュー・ワイエス。アメリカの画家。
モデルの名前はヘルガ。ヘルガは近所に住む人妻で、ワイエスは彼女の絵を240点以上も描きました。驚くのは、15年にもわたりワイエスの妻にもヘルガの夫にも知られずに、です。

肖像画はいい!その時代の髪型や衣服や宝飾品を知ることが出来るからです。
王族や貴族の肖像画も好きですし、庶民の肖像画も好きです。
私はどちらかと言うと、モデルより画家の方に興味はありますが、モデルを知ることでより画家を知ることが出来ます。
画家の殆どは、プロのモデルを雇ったり妻や愛人をモデルにするようです。

『画家とモデルー宿命の出会い』では、18人の画家とそれぞれのモデルの肖像画が紹介されています。

1.サージジェント
2.ゴヤ
3.ベルト・モリゾ
4.ベラスケス
5.レンピッカ
6.モロー
7.メンツェル
8.ロートレック
9.ホルバイン
10.シャガール
11.フォンターナ
12.フランチェスカ
13.モディリアーニ
14.クノップフ
15.クラーナ
16.レンブラント
17.ヴァラドン
18.ワイエス

『画家とモデルー宿命の出会い』というタイトルから、画家とモデルの恋愛話が多いのかと思われるかもしれませんが、そうではありません。恋愛話を期待される方には少し残念かもしれません。

18人の画家の中から3人のをピックアップしたいと思います。

 

ベラスケス

ディエゴ・ベラスケス 1599年生〜1660年没

スペインを代表する天才画家。24歳という若さでフェリペ4世に気に入られ宮廷画家となる。
宮廷画家ですから、もちろん王様やお妃様や王子王女様を描くのが仕事です。
しかしベラスケスは、小人症の人の絵も描いています。
有名な『ラス・メニーナス』にも小人症の人は描かれていますが、この絵の主役はマルガリータ王女で、お世話をする女官たちと一緒に描かれているに過ぎません。

『ラス・メニーナス』プラド美術館

王族貴族は、小人症の人や巨人症の人や多毛症の人を、自分たちの引き立て役として、あるいはペットのような感覚で彼らをそばに置いていました。

『バリェーカスの少年』

『道化師エル・プリモ』

ベラスケスは、彼らを憐れむでもなく美化するでもなく、同じ一人の人間として魂を込めて描いています。

ベラスケスにはこれと言った逸話もなく、とても謎めいています。
現代に残る作品は約120点で、そのうち50点がプラド美術館にあります。
1599年にセビリアで生まれ、1660年にマドリードで過労死したと言われています。

私がベラスケスに興味を持ったきっかけは、中野京子さんの『怖い絵 死と乙女篇』で、初めてベラスケスの絵を見たときです。『フェリペ・プロスペロ王子』です。写真が小さくて申し訳ないのですが、この絵、違和感がありませんか?
私は初めて見たときにゾワっとしました。この王子は2歳。2歳なのに、子供らしさが全く感じられません。

この王子は生まれたときから病弱で、何度も死にかけました。
ベラスケスは、王子が決して大人になることはないと感じていたのかもしれない。
事実、フェリペ・プロスペロ王子は4歳で亡くなりました。

『画家とモデルー宿命の出会い』からだいぶそれてしまいました!すみません。

 

ホルバイン

ハンス・ホルバイン 1497年生~1543年没

イギリスで宮廷画家となりました。イギリス人ではなくドイツ人なんですね。
ヘンリー8世の肖像画を描いた人です。このヘンリー8世という人は、歴史に類を見ないほどの残酷な王様です。

 

ヘンリー8世は生涯に6回結婚しています。お妃だろうが大臣だろうが、気に入らないと斬首刑にする人です。ホルバインも、いつ怒鳴りつけられるか、いつ殴られるか、いつ死刑になるか分からない毎日です。

想像すると気の毒すぎます。そんなホルバインには、王の妃候補の絵を描くという任務もありました。
写真のない時代です。その人の特徴を捉えつつ、少しは美化して描かないと失礼ですし、かと言って画家のプライドもあるでしょうから、自分が納得する絵にしないと。大変難しい仕事ですよね。

クリスティーヌ・ド・ダヌマルク

この方とは結婚できず。やんわり断られた。

アン・オブ・クレーヴス

この絵を見た王は気に入る。実際に会ってみると「絵と全然違う!!」と激怒。しらんがな(笑)
ホルバインに絵を描かせた家臣のクロムウェルは斬首刑。ホルバインは命は取られることはなかったけれど、宮廷画家の身分は剥奪され追放。その後まもなくペストによって死亡。

国も時代も違いますが、同じ宮廷画家ベラスケスと比べると、仕える王によってここまでの差があるのですね。

ワイエス

アンドリュー・ワイエス 1917年生〜2009年没

表紙絵『編んだ髪』を描いた人。モデルはヘルガ。

時代がずっと近くになりました。この絵が描かれたのは1979年です。
この絵をじっと見ながら考えます。背景が真っ黒なせいか、写真のように立体的に見えます。すーっと浮かび上がってきそうな気さえします。
伏し目がちなので寂しそうにも見えますし、でも口角が少し上がっていて不幸そうには見えません。どこにでもいそうな女性にも見えますし、凛とした美しさも感じます。不思議です。

ワイエスは、プロのモデルはほどんど使わず、近隣に住む人達ばかりを描いていたようです。
人種差別をすることなく、肉体労働者や体に障害を持つ人や黒人の中高年などを描き続けました。

そして、出会ったのがヘルガです。
彼はヘルガをモデルに15年間に240点以上もの絵を描いています。ときにはヌードもあり。
それを世間から(妻やヘルガの夫からも)隠し続け、70歳近くになって妻に打ち明けたらしい。
そして世間に大々的に発表し、【ヘルガ・シリーズ】は大評判となりました。
ワイエスもヘルガも肉体関係は否定しているそうです。まあ想像すると、そんなのあり得ない!と思ってしまいますが、どちらでもいいです。若くも美しくもない(失礼)ヘルガが、描かれているうちに磨かれて綺麗になっていったのは間違いないようです。

まとめ

モデルはどんな気持ちなんでしょう?
描かれる立場からすると、自分の奥底に隠している醜い部分まで見抜かれそうな気がします。
私は嫌ですね。
ヘンリー8世のような人は、自分を大きく立派に見えるよう命令して描かせるんでしょう。
女性ならもっと目を大きく、体はスリムに描いて頂戴と。世に出回っているのはほんの一部で、ボツになったものは山程あるのでしょうか…

絵なんかみてもよく解らないと言われる方も、人物の絵ならどうでしょうか?
「この人綺麗」とか「この人なんだか怖い」とか「不気味」とか「悲しそう」とか感じると思います。
そこから一歩踏み込んで画家とモデルについて知ると、もっと興味が湧いてきて、どんどん深みにはまっていきますよ。

 

ではまた!

 

 



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